X.Serra教授の講演

音楽情報処理界隈の重鎮、Xavier Serra氏が、自身が携わってるプロジェクトを紹介しに中国にやってきました。おとといTencentで一回講演を行って、今回は復旦大学にやってきました。

Serra氏はスペイン・バルセロナのポンぺウ・ファブラ大学Music Technology Groupのグループリーダーで、音声処理とMIRを専門とされる超有名学者です。ヤマハとMTGで共同で行われたボカロの基礎技術の開発に携わった方でもあります。ある意味ボカロの生みの親!Courseraでコースを開いてるので聴いてみるべし。

そしてとてもイケメンで気さくなおっさんです。今日あって改めてイケメンだと思いました。やっぱ欧州人はいいツラしてるしいいガタイ持ってんなぁ、うらやま。

MTGは現在、CompMusicという研究プロジェクトを行っていて、これはHindustani (North India), Carnatic (South India), Turkish-makam (Turkey), Arab-Andalusian (Maghreb), and Beijing Opera (China)などの、西洋音楽とは全く異なる体系の音楽を研究し、音楽文化の知識をもとに高度な音楽分析システムを開発しようという試みです。今回はその一環、Beijing Operaの研究材料を集めにMTGメンバー数名とともに訪中し、上海、北京を巡ることになってるとのこと。

そしてこのプロジェクトの紹介が今回の講演のテーマでした。講演では、中国語が結構流暢なRafael Caro氏が、京劇の専門的見地に基づいて設計された、京劇の自動分析手法を紹介しました。京劇のもっともメインな部分である歌手のパフォーマンス分析では、ピッチヒストグラムを使って西洋音楽体系から逸脱した特殊な音高構造を発見したり、ビブラートの振動数の時間変化分析(京劇の歌唱はビブラートの変化もテクニックらしい)という、従来の音楽分析では触れてこなかった側面を分析していました。

更には音楽と歌詞、楽譜のシンクロナイズ、そして音声からMIDIへのトランスクリプションなど、応用面での技術も紹介しました。

Xerra氏は結びで、このプロジェクトを立ち上げた目的は、文化的側面から音楽をさらに深く理解することで、現在すでに「ガラスの天井」に突き当たっているMIR技術の解決策を見出すことだといいます。現在のMIRの研究はまだまだ音楽的な見地を充分取り込めていないのが、技術の停滞の原因ではないかと考えてる、とのこと。今のプロジェクトではいまだその答えが見いだせていないといいますが、「音楽そのものを深く理解する」、という原点回帰的なアプローチはとても参考になったと思う。

講演の質問段階では、ボカロ技術にも少し触れてくれました。「ハツネミクは実は今よりももっといい音を作ることができる。でもミクのキャラを保ちたいために、ヤマハがそれをやらせてくれないので、実にやるせない気持ちだ」と漏らしていました。そんな内実もあったんですねw。

僕がボカロがきっかけで音楽情報処理に興味を持ったことを伝えると、とても喜んでくれました。

こうやってある分野の大物と直接交流できる機会はめったにないので、なんだかとても意識が高くなった感じがします。